2022年9月28日(水)+49979人
【山椒魚戦争】を携えて埼京線の川越行きの先頭車両前のホームで待つ。並んでる客が多いので、一番最後に乗り込み運転席後ろの角に陣取り、本を開く。するすると茶立虫が動く、「フッ!」と吹き飛ばして読みだす。何といっても1998年モノなので、古く黄色い紙になってる。
第1部1章を読む。ある島の入り江に住む山椒魚に遭遇したこと、彼らが言葉を理解すること、道具を扱えること、そして教えると真珠を海底から探してくることを発見したことが示される。
およそ30分で川越に着き、八高線に乗換える。急ぎじゃないので時間は見ないで、ベンチに座り本の続きを読む。八王子行きは空いている、しばらくの車窓は住宅地しか見えないので、読書を続ける。面白いので電車のリズムに合わせてページが進む。笠幡過ぎから遠景に奥多摩の山塊が近くに見えてきた。本を閉じて景色を見やる。この環境を求めて来たのだ。
東飯能を過ぎると、さらに大岳山が近くに見えてきた。読書は中断だ。拝島で乗換し、西に行けば青梅だが登山には時間が無いので、東の東京行に乗る。ここからは景色に興味ないので、読書に専念だ。とにかく終点の東京へ。ページが進む。
第2部ではこの時点での山椒魚は、人類にとって、かつての黒人奴隷以上に文句を言わない低コストの労働力が簡単に手に入るという側面が大きく、山椒魚の飼育と販売は人類になくてはならない産業に発展していくが、一方で、会話までできるようになった山椒魚に対し、様々な立場の人間が山椒魚の人権を唱えたり、キリスト教の洗礼を受けさせられないか考えたり、政治闘争に巻き込めないか山椒魚に打診する者が現れるなど、人類がけんけんがくがくと議論を重ねている状況になった。
そして第3部各国が次第に山椒魚に武装させ、海面下で小競り合いが起こるようになった。すでに山椒魚の個体数は人間を遙かに超え、人間社会は山椒魚に強く依存するようになっていた。それを危惧する識者も現れ、山椒魚は危険だと標榜する怪文書が出回る。
人類が山椒魚を便利に使っている間に、山椒魚たちは、世界人口の7~20倍にも増加しており、海底には工場、石油坑、海草農場、ウナギ養殖場、水力その他自然動力源の利用設備などが揃い、山椒魚たちはそれを意のままに操れるようになっていた。人間が水に毒を流して山椒魚を駆逐しようとすると、山椒魚は報復として毒ガスにより人類を苦しめた。このように山椒魚は人間文明のすべてを継承していたのである。山椒魚は、人間に対し、海中でふんだんに採れる金(きん)と引き換えに、陸地を売れと交渉する。交渉は決裂するが、選択の余地はなく都市は次々に海底に消えていった。
終点の東京に着いた。東京駅から京浜東北線に乗換え、さいたま新都心へ着く頃には・・・
物語はほぼここで終了し、11章では作者の「いずれ山椒魚たちは内戦を始めて滅亡し、人類は九死に一生を得るだろう」というメタフィクション的な自問自答が挿入され、山椒魚たちの未来も必ずしも明るくはないことが示される。だが、本編末尾は「(山椒魚たちが滅びたあと)そこから先は、僕にもわからないさ」の一文で終わり、山椒魚が滅びても人類の未来は明るいとは限らないことを暗喩して、物語は終わる。
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